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第121回:インボイス制度の概要

2020年12月17日

皆さま、こんにちは。
今回の税務トピックでは、「インボイス制度の概要」についてご紹介いたします。
インボイス制度は令和5年10月1日から導入が開始し、原則このインボイス(適格請求書)に記載された金額が仕入税額控除の対象となるため、事業者が消費税を納める際に大きく関わる制度となります。特に現在免税事業者である法人・個人事業主には大きく影響を与えられることが想定されます。

インボイス (適格請求書)とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。具体的には、現行の区分記載請求書に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。
区分記載請求書・適格請求書の記載事項につきましては、第91回トピックにてご紹介していますので、ご参照ください。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、複数税率に対応した仕入税額控除の方式です。売手である登録事業者は、課税事業者である買手から求められたときにインボイスを交付することになります。買手は仕入税額控除の適用を受けるために原則として、売手である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。今回は概要として売手と買手それぞれの立場で必要となる対応をご案内いたします。

1.適格請求書発行事業者 (売手側の留意点)
適格請求書発行事業者には、課税事業者である買手の求めに応じて、適格請求書を交付する義務及び交付した適格請求書の写しを保存する必要があります。また交付した適格請求書に誤りがあった場合には、修正した適格請求書を交付しなければなりません。

A:適格簡易請求書
不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食店業等については、交付を受ける事業者名の記載を省略した適格簡易請求書を交付することができます。

B:適格請求書に記載する消費税額等の端数処理
適格請求書の記載事項である消費税額等については、一つの適格請求書につき、税率ごとに1回ずつ端数処理を行います。そのため小売業などの場合、個々の商品ごとに消費税額等の端数処理を行わないことになります。

C:適格請求書の交付義務免除
適格請求書を交付することが困難な以下の取引は、適格請求書の交付義務が免除されます。
a.公共交通機関である船舶、バスまたは鉄道による旅客の運送(1回の取引の税込金額が3万円未満であるもの)
b.出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡
c.生産者が農業協同組合、漁業協同組合等に委託して行う農林水産物の譲渡
d.自動販売機により行われる課税資産の譲渡等(3万円未満のものに限る)
e.郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)

以上のa、d及びeは請求書の交付が行われない取引であるため、請求書自体が発生しません。b及びcの取引は適格請求書以外の書類の交付が行われるケースとなります。

2.仕入税額控除の要件(買手側の留意点)
適格請求書等保存方式の下では、一定の事項を記載した帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。なお、帳簿の記載事項については、現行と同様になります。

A:請求書等の範囲
保存が必要となる請求書等には、以下のものが含まれます。
a.適格請求書または適格簡易請求書
b.仕入明細書等
c.卸売市場において委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の譲渡及び農業協同組合等が委託を受けて行う農林水産物の譲渡について、受託者から交付を受ける一定の書類(前記1C-b.cの取引)
d.aからcの書類に係る電磁的記録

B:帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合
請求書等の交付を受けることが困難な取引は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。主なものは次のとおりです。
a.適格請求書の交付義務が免除される前記1C-a.d.eに掲げる取引
b.適格簡易請求書の記載事項を満たす入場券等が、使用の際に回収される取引
c.従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当等に係る課税仕入れ

また現行、「3万円未満の課税仕入れ」は法定事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる旨が規定されていますが、インボイス制度の導入後はこれらの規定は廃止されます。

C:口座振替(振込)の家賃の取扱い
口座振替や振込により決済される家賃については、以下の書類を保存することにより仕入税額控除の要件を満たすことになります。
a.登録番号などの必要事項が記載された契約書等
b.口座振替又は振込された日付と金額が印字された通帳

以上、インボイス制度の概要として売手と買手のそれぞれが必要となる対応についてご紹介いたしました。インボイス制度の導入により仕入税額控除の要件が大きく変わりますが、買手側の請求書等の保存はかなり厳密に変更されたことが見て取れます。適格請求書を発行する対応と併せて、保存が必要となる書類をしっかりと抑えておき、不足書類などが発生した場合には売手へ必ず交付していただくように対応していくことが大切になります。
次回の税務トピックでは、免税事業者にも関わるインボイス制度についてご紹介いたしますので、ご期待ください。

ご質問やご相談等ございましたら、ぜひチェスナットまでお問い合わせください。

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参考URL
「国税庁 適格請求書等保存方式(令和5年10月1日~)」

「国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A