2018年10月13日
「長期前払費用 ~ その経費、全額計上しても問題ないですか?」
今回の経理トピックは、気をつけていないと全額経費計上している場合がある「前払費用・長期前払費用」についてのルールをご紹介いたします。
前払費用とは、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいいます。
前払費用は、原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものです。
国税庁HPより抜粋
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5380.htm
役務とは、いわゆるサービスのことです。
サービスの提供を受けていない場合は、税務上、原則として経費計上せずに前払費用(資産科目)に計上することになりますが、特例として、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を、毎年継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、その支払時点で損金の額に算入(全額経費計上)することが認められます。(短期前払費用)
ただし、借入金を預金、有価証券などに運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、短期前払費用の特例が認められませんのでご注意ください。
長期前払費用も、基本的に同じ考え方になります。
具体的な例としては、複数年の保険料を一括払いするケースや、賃貸借契約時に支払う保証料や敷金で契約終了時に返還されないものの支払があげられます。その場合、全額経費計上(損金算入)することはできませんので、その期間にわたって経費計上をしていくことになります。
「長期」と「短期」の違いについては、基本的に一年以内かどうかで判断します。
長期前払費用と繰延資産との違い
長期前払費用が役務の提供を未だ受けていない支出であるのに対して、繰延資産は役務の提供を既に受けている支出になります。
例えば開業費(開業時にかかった費用)は、支払は既にされていますが開業後に収益を得るための費用になります。そのため、将来の期間にわたって効果が発生するものと考え「資産科目」へ計上し、一定の期間で費用化を図っていきます。他には、創立費や開発費なども繰延資産に該当します。
そのほか下記のものが、税務上、繰延資産と定められていますので、計上の際にご注意ください。
- 公共的施設などの負担金
- 資産を賃借するための権利金等(賃貸借契約の礼金等)
- 役務の提供を受けるための権利金等
- 広告宣伝用資産を贈与したことにより生ずる費用
- その他自己が便益を受けるための費用
注意とまとめ
まずは期間について「短期」か「長期」の確認をしましょう。
長期前払費用を計上したら、期間に応じて費用化することも忘れずに行いましょう。
そして、税務上の繰延資産にあてはまるかどうかのチェックもお忘れなく。
ご不明な点がありましたら、是非チェスナットにご相談ください。