お役立ち情報 

第234回:事前確定届出給与について

2024年7月1日

皆さま、こんにちは!夏の賞与支給シーズンに突入しましたが、役員賞与の取扱には注意が必要です。役員に対する給与(役員報酬)や賞与については、税務上の規定に従って支給しなければ損金として認められず、税負担が大きくなり資金繰りの悪化に繋がる可能性があります。

そこで、今回の税務会計トピックでは、「事前確定届出給与」に焦点をあてて役員に対する給与、賞与についてご説明します。

 

 

役員に対する給与の概要

税務上損金として認められるには下記要件のいずれかを満たす報酬のみとなります。

 

  • 定期同額給与

1ヶ月以内の一定期間ごとに議事録に定められた金額を事業年度期間内に毎月支払うものを指します。従業員のように残業代等により毎月給与が変動するのではなく、株主総会や取締役会にて今期の役員報酬額を決めて、その事業年度が終了するまでは毎月同額を支給する必要があります。

 

  • 事前確定届出給与

経営者や監査役等の役員に対して所定の時期に確定額を支給する旨を定め、事前に税務署に届出をした給与のことです。役員賞与や非常勤役員へ臨時的に報酬を支払う場合に活用されます。

 

  • 業績連動給与

会社の利益状況や株式の市場価格の状況等、客観的な会社の業績を示す指標に基づき役員報酬額を算定し支払うものが該当します。前述の2つの制度と異なり、金額が確定していないのが大きな特徴です。

 

「業績連動給与」は会社の利益に連動させて支給するため、経営者に対してインセンティブを与えるメリットがありますが、利用要件が厳しく指標の算出等事務手続きが煩雑であることから、一般的に役員賞与を支給する際は「事前確定届出給与」を採用し、毎年決算確定時に開催する定時株主総会等にて、「定期同額給与」である役員報酬の改定と併せて役員賞与の支給額を決定する会社が多いかと思います。

 

事前確定届出給与

役員賞与を事前確定届出給与として損金算入するためには、支給日と支給額を決定したうえで、提出期限までに税務署への届出が必要となります。要件を満たさなければ損金として認められないため注意が必要です。

 

1)事前確定届出給与を支給までの流れ

① 株主総会又は取締役会にて役員報酬(賞与)の支給日と支給金額を決定し議事録作成

※税務調査にて議事録を確認される場合もあるので、必ず作成をしておきましょう。

 

②「事前確定届出給与に関する届出書」を作成

書式については下記URLからダウンロードできます。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/5104.htm

届出書の他、賞与を支給する役員毎に付表も作成します。

 

 

※税務通信NO3698号より付表記載例抜粋

 

 

③提出期限までに所轄税務署へ提出 ※提出期限要注意!

各会社の状況により、下記のとおり提出期限が異なります。

 

区分提出期限
Ⓐ株主総会等の決議によって

所定の時期に所定金額を支給することを

決定した場合

(※大半の会社様がⒶにて期限を判断します。)

次のうちいずれか早い日

(イ)その決議の日から1月を経過する日

(その決議の日=株主総会等の開催日)

(ロ)会計期間開始の日から4月を経過する日

Ⓑ 新設した法人設立の日以後2月を経過する日
ⓒ臨時改定事由により新たに

事前確定届出給与を設定した場合

Ⓐ の届出期限と

臨時改定事由が生じた日から1月を経過した日のうち、いずれか遅い日

 

 

新設法人以外の法人が事前確定届出給与として役員賞与を支給したい場合はⒶに該当します。

例えば4月決算で6月25日に株主総会を開き、事前確定届出給与支給を決議した場合ですと、

 

(イ)の日付:7月25日(決議日6月25日から1ヶ月を経過する日)

(ロ)の日付:7月31日(会計開始4月1日から4ヶ月を経過する日)

 

のうちいずれか早い方が提出期限となるため、7月25日までに提出する必要があります。

 

④事前確定届出給与記載の支給日、報酬額にて支給

事前確定届出給与記載どおりに支給すれば、役員賞与についても従業員賞与同様、損金算入でき節税対策にもつながります。

 

2)事前確定届出給与 注意事項

〜事前確定届出給与記載の支給日、報酬額での支給 もしくは 支払わないか~

事前確定届出給与の支給日と報酬額、いずれか一方でも変更して支給した場合には、事前確定届出給与としては認められず、損金として計上できません。

実際に、支給日は正しいものの届出書に記載した金額よりも少ない金額で役員賞与を支払った場合に役員賞与として損金計上を認めない判例も近年出ています。

ただ、届出書提出時には支給見込があっても、業績状況により資金繰り的に支払が厳しい場合もあるかと思います。その場合は役員賞与(事前確定届出給与)の支払はなしとすることができます。

事前確定届出給与の支給日が近づいてきましたら、業績状況を鑑みて、事前確定届出給与記載どおりに支給するか、それとも支給なしとするかご判断いただければと思います。

 

 

まとめ~最後に〜

役員に対する給与/賞与については、利益の調整として使われる可能性があるため、税務上細かく規定されており、規定に沿って報酬額や支給日を決定する必要があります。

事前確定届出給与については各会社の決算期やいつ決議をしたかによって、提出期限が異なりますので注意が必要です。

今回は事前確定届出給与に焦点をあてましたが、定期同額給与等役員報酬の改定時期や役員賞与についてご不安な部分ございましたら、お気軽にチェスナットまでご相談ください。