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第226回:財産債務調書の概要について

2024年2月20日

皆さま、こんにちは。

今回の税務会計トピックは、「財産債務調書制度」の概要についてご紹介します。
 
財産債務調書は、所得税のように税務署へ申告すると税金の納税・還付が発生するものではなく、提出により税金は発生しません。確定申告とは提出義務者も違いますので、制度の内容をご存じの方が少ないかと思います。

また、令和4年度の税制改正により、令和5年分以後の提出義務者・提出期限などについて見直しが行われました。是非この機会に財産債務調書制度の概要を抑えていただければと思います。
 
 

  • 財産債務調書を提出しなければならない方

 
次のいずれかに該当する場合は、保有する財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額、その他必要な事項を記載した財産債務調書を、その年の翌年の6月30日までに、所得税の納税地等の所轄税務署に提出しなければなりません。
 

  1. 所得税の確定申告書を提出する必要がある方又は所得税の還付申告書を提出することができる方で、その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産またはその価額の合計額が1億円以上の有価証券等を有する場合
  2. 居住者の方で、その年の12月31日においてその価額の合計額が10億円以上の財産を有する場合

 
 

  • 財産債務調書への記載事項

 
財産債務調書には、氏名、住所(又は居所等)及びマイナンバー(個人番号)のほか、財産の種類、数量、価額、所在並びに債務の金額等を記載することとされています。また、財産及び債務に係る事項については、「種類別」「用途別」(一般用及び事業用の別)及び「所在別」に記載する必要があります。

財産の価額は、その年の12月31日における「時価」又は時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされています。例えば、下記の資産は次のように「時価」又は「見積価額」を確認することができます。
 
・不動産:固定資産税納税通知書

・預貯金:銀行等の口座残高

・上場株式等:証券会社の残高証明書
 
また、財産債務調書の提出に当たっては、別途「財産債務調書合計表」を作成し、添付する必要があります。
 
 

  • 過少申告加算税等の特例

 
財産債務調書は、今後申告する所得税・相続税の内容に申告漏れが生じたときに、過少申告加算税等の特例が適用されます。

  1. 財産債務調書を提出期限内に提出した場合に、財産債務調書に記載がある財産または債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときは、その財産または債務に係る過少申告加算税等が5%軽減されます。
  2. 財産債務調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産又は債務の記載がない場合に、その財産又は債務に関して所得税の申告漏れが生じたときは、その財産又は債務に係る過少申告加算税等が5%加重されます。

 
 

  • 令和4年度の税制改正

 
令和4年度の税制改正において、令和5年分以後の財産債務調書の提出義務者・提出期限などについて見直しが行われました。主な改正内容は下記の3つです。
 

  • 財産債務調書の提出義務者が拡充されました。

令和5年分以後、その年の12月31日において、その合計額が10憶円以上の財産を有する方も提出義務者となります。令和4年分以前は、提出義務者の対象ではございません。
 
B、提出期限が後倒しされました。

令和4年分以前の財産債務調書は、提出期限がその年の翌年の3月15日でした。

令和5年分以後の財産債務調書は、提出期限がその年の翌年の6月30日です。
 
C、記載を簡略化できる範囲が拡充されました。

300万円未満の家庭用動産や事業用の未収入金、借入金などについては記載を簡略化することができます。また、新たに預貯金についても、記載を一部省略することができるようになりました。詳細は以下の図表に記載されております。

(参照) 国税庁「財産債務調書制度等の見直しについて」
 
 
以上、「財産債務調書制度」についてご紹介しました。令和4年度の税制改正により提出義務者が拡充されましたので、これまで提出されていなかった方も確認が必要になるかと思います。また、提出期限が後倒しされたこと、記載内容を一部簡略化できるようになったことは、財産債務調書を作成するうえで、時間に余裕を持って資産等を取りまとめしやすくなるかと思います。

チェスナットに確定申告をご依頼いただいている方、ご自身で確定申告を行っている方で財産債務調書の提出義務者に該当するかどうか判断に迷われている方、または財産債務調書を提出したいけれど記載事項についてお困りの方がいましたら、是非チェスナットにご連絡ください。
 
国税庁「財産債務等諸制度のあらまし」

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/zaisan_saimu/pdf/zaisan_chirashi.pdf

 

国税庁「財産債務調書制度等の見直しについて」

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/zaisan_saimu/pdf/zaisan_leaflet.pdf