2023年11月14日
皆さま、こんにちは。
今回は令和5年10月1日よりスタートしたインボイス制度開始後における、源泉所得税徴収の対象となる報酬から源泉所得税の税額を計算する際の間違いやすい点を、弁護士からの報酬を例にご紹介します。
- 源泉徴収の対象となる弁護士報酬等の源泉徴収税額について
原則として弁護士や税理士への報酬に対する源泉徴収の対象は、支払った金額の全部、つまり消費税および地方消費税(以下「消費税等」と呼びます)を含む金額となります。
ただし、弁護士や税理士からの請求に報酬等と消費税等が明確に区分されている場合は、消費税等を除いた報酬等の金額(税抜価格)のみを源泉徴収の対象とすることが可能です。
【具体例】
- 弁護士報酬:110,000円(税込)と請求書に記載がある場合
源泉徴収額は110,000円をもとに計算され、110,000×10.21%=11,231円(1円未満切捨て)となります。
- 弁護士報酬:100,000円(税抜)、消費税額:10,000円と請求書に記載がある場合
源泉徴収額は100,000円をもとに計算することができ、100,000×10.21%=10,210円(1円未満切り捨て)となります。
★インボイス制度開始後も源泉税の計算の取り扱いについては、『請求書』について必ずしも適格請求書である必要はなく、適格請求書発行事業者以外の事業者が発行する請求書においても報酬と消費税等が明確に区分されている場合には、その報酬の金額(税抜金額)のみを源泉徴収の対象としても問題ありません。
- 仕入税額控除にかかる経過措置と源泉徴収額について
インボイス制度開始から令和11年9月30日までの6年間は、適格請求書発行事業者でない事業者からの課税仕入れについて、最初の3年間は仕入税額相当額の80%、次の3年間は50%が仕入税額控除の対象となる経過措置があります。
法人税では、仕入税額控除対象外の部分を対価の額に含め課税所得の計算を行う必要がありますが、源泉徴収の対象となる金額についてはあくまで、『請求書』に記載されているものに従い計算する必要があります。
【具体例】
- 適格請求書発行事業者でない弁護士からの請求(令和5年10月分 経過措置80%を適用)
弁護士報酬:110,000円(税込)と請求書に記載がある場合
税抜経理の仕訳は下記のようになるが、
(借方) 支払報酬料 102,000円 (貸方) 現金 110,000円
(借方) 仮払消費税 8,000円
請求書上では本体価格と消費税等が明確に区分されていないため、源泉徴収額は法人税上の支払報酬料の金額102,000円ではなく請求書に記載されている110,000円をもとに計算され下記の通りになります。
110,000×10.21%=11,231円(1円未満切捨て)
仮に具体例②の弁護士が、適格請求書発行事業者で無い場合でも、③のような仕訳となりますが、請求書上で報酬と消費税等が明確に区分されているため、その報酬の金額(税抜金額)のみを源泉徴収の対象として計算することが可能になり、源泉徴収の計算においては具体例②と同じ計算となります。
★会計ソフト等のシステムを使用している場合、上記のような仕訳に沿った金額をもとに源泉徴収をしてしまうケースもあるそうなので、源泉徴収の金額を計算する際に対象となる金額についてご注意ください。
なにかご不明点等ございましたら、ぜひチェスナットまでご相談ください。
参考
〇国税庁 『No.6929 消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税』
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6929.htm
〇国税庁 『インボイス制度開始後の報酬・料金等に対する源泉徴収』
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/gensen/111209/01.htm
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