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第177回:「前払費用」について

2022年7月20日

皆さま、こんにちは。

東京はあっという間に梅雨明けして、蒸し暑い日々が続いております。すでに台風も上陸し、本格的な夏の到来ですね。

さて、今回は日頃からなじみのある勘定科目「前払費用」について説明します。

 

  • 前払費用とは

前払費用は、一定の契約に従い継続してサービスを受ける場合、まだ提供されていないサービスに対して支払った時に使う勘定科目です。

たとえば、家賃を支払ったとしましょう。この家賃が翌月分の場合、前払費用を使います。

 

[仕訳例]

当月分を支払った場合→ 地代家賃/普通預金

翌月分を支払った場合→ 前払費用/普通預金

 

また、期中に一年契約の保険料を前払いした時、期末に当期分を保険料として費用に計上し、翌期分を前払費用に振り替える時にも使います。

具体的な日付や金額を例にして、どのように仕訳をするか見てみましょう。

 

<前提条件>

x1/10/20にx1/11/1~x2/10/31の1年契約の保険料12,000円を支払った(会計期間4/1~3/31)

 

[仕訳例]

(1)支払時に保険料として計上する場合

・支払時

10/20 【借方】 保険料  12,000円 / 【貸方】 普通預金 12,000円

 

・決算時

3/31  【借方】 前払費用  7,000円 / 【貸方】 保険料 7,000円

 

11/1~3/31の5ヶ月分(5,000円)→当期の費用

4/1~10/31の7ヶ月分(7,000円)→翌期の費用として前払費用に振替

 

前払費用を計上するタイミングは、支払時、決算時、どちらでもよいとされています。

上の(1)では支払時に全額費用として計上し、決算時に翌期分の費用を前払費用に振り替えていますが、下の(2)のように支払時に前払費用として全額計上し、期末に当期の費用を振り替えても問題ありません。

 

(2)支払時に前払費用として計上する場合

・支払時

10/20 【借方】 前払費用 12,000円 / 【貸方】 普通預金 12,000円

 

・決算時

3/31  【借方】 保険料   7,000円 / 【貸方】 前払費用 7,000円

 

(3) 支払時に当期の費用と前払費用とに分けて計上する場合

・支払時

10/20 【借方】 保険料  5,000円 / 【貸方】 普通預金 12,000円

前払費用 7,000円

 

・決算時

振替なし

 

  • 長期前払費用とは

長期前払費用は、前払費用のうち、決算日から1年を超えて費用化されないものをいいます。

1年以内に費用化される前払費用は、貸借対照表の流動資産に分類され、1年で費用化されない長期前払費用は貸借対照表の固定資産(または投資その他の資産)に分けて記載されます。

長期前払費用を使用した仕訳の例を見てみましょう。

 

[仕訳例]

前提条件は前と同じで、3年契約の保険料36,000円を支払った

 

・支払時

10/20 【借方】 保険料 36,000円 / 【貸方】 普通預金 36,000円

 

・決算時

3/31 【借方】 前払費用 12,000円   / 【貸方】 保険料 31,000円 →翌期の費用

長期前払費用 19,000円                 →翌々期の費用

 

当期に計上できる費用の合計額は、前にご説明した1年契約の場合と同じになります。

翌期分は前払費用、翌々期以降の分は長期前払費用に振り替えます。

 

最後に、税務上の取扱いでは、前払費用は、支払った時の費用にはなりませんが、支払った日から1年以内に役務の提供を受け、継続して支払った時に費用計上している場合は、これを認めるとしています。

契約期間に基づいた按分など前払費用は少々わかりにくい部分がありますが、じっくり考えてみるとそれほど複雑ではありません。

前払いした保険料や1年を超えるライセンス契約などが出てきた時には、参考にしてください。

 

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