お役立ち情報 

第133回:はずれ馬券訴訟について

2021年4月23日

皆さま、こんにちは。
今年も新型コロナウイルスの影響でお花見が出来なくて新型コロナウイルスは本当に恨めしいですね。
いつまで続くのか分かりませんが、上手につきあっていきたいものです。

さて、先日、お客様とのやり取りの中で、次のようなご質問をいただきました。

Q. 「在宅の時間が多くなったので、自宅で儲けようと競馬の馬券を携帯決済で購入したが、購入代金の出金だけでなく当たり券の払い戻しも通帳に入金するようにすれば、外れ券も経費になりますか?」

A. 「競馬や競輪の払戻金は基本一時所得です。
一時所得に該当する場合、経費は当たり馬券の購入費用だけとなります。」

競馬で得た収入が営利目的の継続行為であり雑所得に該当すれば、外れ馬券も必要経費に認められますが、実際ハードルは高いと思います。

ということで、4月の税務トピックは、「はずれ馬券訴訟」についてお伝えします。

【外れ馬券訴訟】
最高裁判所平成29年12月15日判決
原審:東京高等裁判所平成28年4月21日判決
第1審:東京地方裁判所平成27年5月14日判決
-争点-
通常馬券の返戻金にかかる所得が、「一時所得(はずれ馬券の購入代金の控除不可)」
と、「雑所得(雑所得の購入代金の控除可」のいずれに該当するか。

<最高裁判所第二小法廷 平成29年12月15日判決/平成28年(行ヒ)第303号>
1. 判示事項
(1) 競馬の当たり馬券の払戻金が雑所得に当たるか?
(2) 競馬の外れ馬券の購入代金を必要経費として控除できるか?

2. 裁判要旨
(1) 年間を通じて利益が得られるように工夫しながら,
ア.回収率が総体として100%を超えるように馬券を選別して購入し
イ.利益も得て
ウ.購入金額も高額であった
ことを考えると、購入により得た当たり馬券の払戻金は,一時所得ではなく雑所得に当たる。
(所得税法34条1項,所得税法35条1項)

※回収率:全ての有効馬券の購入代金の合計額に対する当たり馬券の払戻金の合計額の比率

(2) 偶然性の影響を受けないように多数の馬券を頻繁に購入し,年間を通じて継続して利益が得られるようにするためには、外れ馬券の購入は必要であったとすると,外れ馬券の購入代金は,当たり馬券の払戻金を得るため、直接に要した費用として,雑所得の必要経費に当たる。
(所得税法35条2項,所得税法37条1項)

いかがでしたか。
普通は、一時所得に該当し、50万円の特別控除がありますので、1年間で合計50万円を超えない限り申告義務は無いということになります。

判例は、難しいと思いがちですが身近な内容を扱っている事もあります。触れてみると新しい発見があるかもしれません。

今回の判例を読んで、一時所得と雑所得の違いにも目を向けて読んでいただければ嬉しいです。

 

★お問い合わせはこちらから

<参考>
1.国税庁
競馬の馬券の払戻金に係る課税について
https://www.nta.go.jp/information/other/data/h30/keiba/index.htm所得税 基本通達 34-1 一時所得の例示
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/08.htm
2.所得の金額
(1)一時所得の金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
(2)雑所得の金額 =総収入金額(公的年金等以外のもの)-必要経費