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第127回:新型コロナウイルスに関連した助成金と検査費用等の確定申告における取り扱い

2021年2月19日

皆さま、こんにちは。

新年が明けて約一ケ月が過ぎましたが、今年も確定申告の時期がやってまいりましたね。

令和二年度は新型コロナウイルス感染症の流行により変化の多い年でしたが、確定申告にはどういった影響があるのか、疑問に思われている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

今回の税務トピックでは、新型コロナウイルス感染症に関連した新しい助成金、また感染症検査費用等の、確定申告における取り扱いについてご案内します。

 
【新型コロナウイルス感染症関連の助成金について】
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い国や地方公共団体から補助金・助成金を受領した場合は、申告の対象となるのでしょうか。また、対象となる場合にはいつの収入として計上すればよいのでしょうか。

 
所得税が課税されないもの
新型コロナウイルス感染症に関連した助成金の中でも、所得税が課税されないものがあります。主な助成金は以下の通りです。

・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金

・新型コロナウイルス感染症対応休業給付金

・特別定額給付金

・子育て世代への臨時特別給付金

・学生支援緊急給付金

・低所得のひとり親世代への臨時特別給付金

・新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金

・企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特別措置における割引券

・東京都のベビーシッター利用支援事業の特別措置における助成

 
収入時期の取り扱い
申告の対象となる助成金は、いつの収入として計上すればよいのでしょうか。

(原則的な考え方)

所得税を計算する場合の収入の計上時期は、原則的にはその収入の権利が確定した日の属する年分とされています(所得税法第36条)。

助成金等につきましては、支給の決定された日が、助成金という「収入の権利」が確定した日と考えられます。従って支給決定の日が属する年度に計上します。

 

(特定の支出を補填する助成金の場合)

上記のように「支給決定の日=権利確定の日」となる助成金の他に、支給要綱によって定められた特定の支出を補填する助成金があります(例えば、「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」におけるマスクの購入費用が挙げられます)。

このような助成金においては、受給に必要な手続きを行っている場合、その支出があった時点で、実質的に助成金を受給する権利が確定すると考えられます。従ってその支出が発生した日の属する年分に収入を計上します。

 

上記の二点を踏まえた主な助成金等とそれらの収入計上時期は以下の通りです。

 

【事業所得等になるもの】

支給決定時の収入となるもの

・持続化給付金(事業所得者向け)

・東京都の感染拡大防止協力金

 

支給決定時または経費発生時の収入となるもの

・雇用調整助成金

・小学校休業対応助成金(支援金)

・家賃支援給付金

・小規模事業者持続化補助金

・農林漁業者への経営継続補助金

・医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業における補助金

 

なお、事業所得等を算出するとき「総収入金額」から「必要経費」を差し引きますが、助成金等の申請手続きで発生した費用(申請に要した行政書士等への報酬など)もこの必要経費に該当するため、収入から控除することができます。

 

【一時所得・雑所得になるもの】

・Go Toトラベル事業における給付金・・・旅行終了時(旅行代金割引相当額)、

クーポン使用時(地域共通クーポン相当額)

・Go Toイート事業における給付金…ポイント、食事券使用時

・Go Toイベント事業における給付金…ポイント、クーポン使用時

・持続化給付金(給与所得者むけ)…支給決定時

 

Go Toキャンペーンによる支給額も、実は所得税において課税対象となるので注意が必要です。ただし、一時所得は50万円の特別控除が適用されますので、他の一時所得との合計額が50万円以下の場合は、課税対象にはなりません。また年末調整済みの給与所得者で、給与所得以外の所得等の合計が20万円以下の場合には、申告不要です。

 

【医療費控除について】

自身や家族のために医療費を支払った場合には、一定金額の所得控除を受けることができます。

ここで、医療費控除の対象になる医療費とは、

1.医師等による診断や治療のために支払った費用

2.治療や療養に必要な医薬品の購入費用

とされています(所得税法73条2項、所得税法施行令207条1項)。

 

新型コロナウイルス感染症の流行によりマスクの購入、検査費用などの支出が増えましたが、これらは医療費控除の対象となるのでしょうか?

 
マスクの購入費用
医療費控除の対象になりません。

マスクは、感染予防を目的に着用するものであり、治療・療養に必要な費用とは認められないためです。

 
PCR検査費用
(医師等の判断により検査を受けた場合)

感染の疑いのある方に対して行う場合など、医師等の判断により受けたPCR検査費用は上記の1.に該当し自己負担額のみ医療費控除の対象となります。

 

(自己判断で検査を受けた場合)

単に感染していないことを明らかにする目的で受けた検査は、上記1・2に該当せず、控除対象外となります。

ただし、自己判断で検査を受けた場合でも、陽性判定が出て、引き続き治療を行った場合、医療費控除の対象となります。検査費用の部分も治療に先立って行われる診療ととらえられるためです。健康診断等の費用は医療費控除の対象となりませんが、診断の結果重大な疾病が発見され、かつその疾病の治療を行った場合には、医療費控除の対象となるのと同様です。

 
オンライン診療に関連する費用
新型コロナウイルス感染防止のためオンライン診療を導入している医療機関が増えましたが、その場合の診療その他の費用についてはどうでしょうか。

オンライン診療…医療費控除対象

オンラインシステム利用料…診療に直接必要な費用であるため医療費控除の対象

処方医薬品の購入費用…治療・療養に必要な医薬品である場合、医療費控除の対象

処方医薬品の配送料…療・療養に必要な医薬品の購入費用に該当せず対象外

 

以上、令和二年度確定申告における、新型コロナウイルス感染症拡大の影響についてご案内しました。

確定申告でお困りの方は是非チェスナットまでご相談下さい。

 

(参照)

国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ

 

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