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第124回:インボイス制度の手続き等について

2021年1月22日

 

皆さま、こんにちは。今回の税務トピックは、前回に引き続き令和5年10月より導入される「インボイス制度」における売手側の手続、買手側の課税仕入れに係る経過措置の2つについて解説します。

売手側の手続

1.適格請求書発行事業者登録制度

適格請求書(以下、インボイス)を交付したい場合、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」(以下、登録申請書)を提出し、登録を受ける必要があります。
また、課税事業者でなければこの登録を受けることができないため、免税事業者の場合は「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要があります。
ただし、免税事業者が手続する場合の経過措置もありますので、そちらは4.で解説いたします。

※インボイス発行事業者は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下となった場合であっても免税事業者にはならず、消費税の申告義務が生じます。

 

2.登録申請のスケジュール

登録申請書は、令和3年10月1日から受付開始となり、e-Taxでも提出可能です。
インボイス制度が導入される令和5年10月1日から登録を受けるためには、原則として、令和5年3月31日まで(ただし、困難な事情がある場合には、令和5年9月30日まで)に登録申請書を提出する必要があります。
※登録日が10月1日以降となる場合は、希望する登録日の初日の前日から起算して一ヶ月前の日までに登録申請書を提出します。

 

3.登録の取りやめ手続

インボイス発行事業者を取りやめたい場合、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(登録取消届出書)を提出することにより、原則として、登録取消届出書を提出した翌課税期間の初日から失効となります。

なお、上記の場合、提出日の属する課税期間の末日から起算して30日前の日までに提出する必要があります。
上記を過ぎてしまうと翌々課税期間の初日から失効となりますので、ご注意ください。

 

4.免税事業者の登録手続

少々ややこしいのが、この免税事業者の登録手続です。
前述の通り、免税事業者の場合は「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要がありますが、令和5年10月1日を含む課税期間中に登録を受ける場合は、登録を受けた日から課税事業者となる経過措置が設けられています。

通常ですと「消費税課税事業者選択届出書」を、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出しなければなりませんが、この経過措置の適用を受ける場合は消費税課税事業者選択届出書の提出は必要無く、インボイス発行事業者の登録をもって登録日から消費税課税事業者となることができます。

また、簡易課税の方が納税負担が小さく有利になりそうであれば、「消費税簡易課税制度選択届出書」を一緒に提出することで、期中であってもその適用を受けることができます。
なお、登録日以降は消費税の申告が必要になりますので、登録日~期末までの期間分の消費税を計算および申告することとなります。

上記につきまして、わかりやすく12月決算の法人(および個人事業主)を例にご説明いたします。

例1)12月決算法人(または個人事業主)で経過措置の適用を受ける場合
・インボイス発行事業者の登録申請書のみを令和5年3月31日までに提出する。
・簡易課税が有利であれば、同じタイミングで簡易課税の選択届出書を提出する。
⇒インボイス発行事業者となり、令和5年10月1日(登録日)~同年12月31日の期間のみ課税事業者となるため、その期間の消費税の申告義務が生じます。

例2)12月決算法人(または個人事業主)で翌期の期首より登録を受ける場合
・インボイス発行事業者の登録申請書および消費税の選択届出書(有利であれば+簡易課税の選択届出書)を令和5年11月30日までに提出する。
※インボイスの登録申請書の提出期限が、登録日の初日の前日から起算して1月前の日となりますので、そちらの期限にあわせて消費税の届出も一緒に提出することをお勧めします。
⇒令和5年10月1日~同年12月31日まではインボイス発行事業者にはならず、消費税の申告義務もありません。

 

買手側の課税仕入れに係る経過措置

5.免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置

インボイス制度導入後は、免税事業者や消費者など、インボイス事業者以外の者から行った課税仕入れは、原則として仕入税額控除を行うことができません。ただし、下記の期間において、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。

<令和5年10月1日~令和8年9月30日まで>
仕入税額相当額の80%
<令和8年10月1日~令和11年9月30日まで>
仕入税額相当額の50%
<令和11年10月1日~>
全額控除不可

なお、この経過措置の適用にあたっては、免税事業者等から受領する区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存と、この経過措置の適用を受ける旨を記載した帳簿の保存が必要です。

 

6.まとめ

トピック2回にわたり、インボイス制度について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
売手側で考えると、例えば塾やピアノ教室など消費税の申告義務の無い一般消費者を多く相手に事業を行っている事業者であれば、必ずしもインボイス発行事業者になる必要は無さそうです。
ただ、取引先に課税事業者がいる場合は、インボイス発行事業者になることを頼まれたり、場合によっては仕入税額控除が行えなくなることを理由に取引の解消等を求められることも懸念されます。

また、経理処理も複雑になることが予想されます。経理業務をチェスナットのような専門業者へアウトソーシングしたことが無いようでしたら、これを機に検討されても良いかもしれません。

インボイス制度に関するご相談やご質問、経理代行に関するご相談がございましたら、是非お気軽にチェスナットへご連絡ください!

 

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参考URL
国税庁「適格請求書等保存方式(令和5年10月1日~)」

国税庁「免税事業者の方に留意していただきたい事項」