2020年12月16日
皆さま、こんにちは!
年末差し迫る時期ではありますが、いかがお過ごしでしょうか。一旦落ち着いたかに見えた新型コロナウイルスではありますが、寒さとともに活発化してきたニュースが増えてまいりました。皆さまもお身体には気を付けて、手洗い、うがい、マスク着用を意識していきましょう。
今回の労務トピックでは、先日最高裁判所にて立て続けに判決が出された正社員と非正規雇用労働者の同一労働同一賃金に関する判例をお伝えします。
■同一労働同一賃金
2020年10月13日には、メトロコマース裁判。続いて10月15日には、日本郵便裁判3件の最高裁判決が相次いで出されました。
そもそも、今回の裁判はいずれも、正社員と非正規社員との待遇格差が、労働契約法20条「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」に当たるかどうかが争われたものです。
この法律は、いわゆる同一労働同一賃金について定めた、パートタイム・有期雇用労働法8条に引き継がれて、大企業は、今年2020年4月より、中小企業も来年2021年4月より適用されることになりました。
1.退職金に関する最高裁判決(メトロコマース事件)
正社員と非正規社員との退職金の差異について争われた事例
労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないと判示
退職金については、正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から使用者の裁量判断を尊重する余地は比較的大きいものと説明
2.正社員と有期労働契約の年末年始勤務手当等労働条件の相違に関して争われた事例(日本郵便訴訟3件)
労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると判示
賃金以外の労働条件の相違についても同様に、個々の労働条件の趣旨を個別に考慮すべきものと解すが、
どの条件に対しても、正社員に対して支給する一方で、同業務を担当する期間雇用社員に対して支給しないという労働条件の相違は労働契約法20条にいう不合理を認められるものに解するのが相当と説明
■2つの判決から
いずれの最高裁判決も当該待遇の目的や趣旨を踏まえたうえで、労契法20条所定の諸事情を考慮しており共通しているが判断は分かれる結果となりました。その理由として、各待遇の同条所定の諸事情との関連性の程度に差があったためと解されます。
退職金に関しては基本給を算定基礎としています。基本給は職務遂行能力に応じて定まる職能給の性質を有しており、これに加えて正社員に継続的就労が期待されるといえる業務内容・人材活用の実態があり、そこに正社員たる人材の確保・定着という支給目的が認定されました。
他方で法定外休暇や手当などは趣旨が単一で当該趣旨に照らすと「職務の内容及び変更の範囲」の相違や「その他の事情」によっても有期雇用労働者に対してそれらを認めないという相違を説明しきれないものでした。
■どのように実務対応すべきか
有期契約労働者が、ある程度長期間雇用されることを想定して採用されており、有期雇用契約者と比較の対象とされた無期契約労働者との職務の内容等が実質的に異ならない場合において、労働条件の相違が不合理となる可能性があります。
そのため(1)雇用が想定される期間を「ある程度長期」にしない、(2)正社員と非正規社員の職務の内容、配置の変更の範囲について具体的な差異を検討する必要があります。
- (1)の場合、少なくとも5年を超えると長期と判断される可能性が高く、超えた非正規社員に対しては準社員的な別の雇用形態への移行を検討するべきである
- (2)の場合:難易度的な差異があることが望ましい。また、配置変更の範囲について比較対象はあくまでも原告側が選択できるため、配置転換のない社員を比較対象に設定できるわけではないことを注意する。
- (3)正社員と非正規社員の人事考課に違いがあるかは重要である。将来の役割期待が異なることを示し、待遇差を説明しやすい。
そもそも労働条件は労使自治で決定するのが原則であり、メトロコマース事件補足意見でも「労使交渉等を踏まえて、賃金体系全体を見据えた制度設計がされるのが通例」とされており、労使交渉は単なる1要素ではなく、根源的な重要性を持つものです。そのため、企業としては改めて正社員と非正規社員の際について検討し、その結果を企業内で提示をして労使交渉を行うことが大切です。
いかがでしたでしょうか。社員様からご質問あれば対応いたしますので、ぜひチェスナットまでお問い合わせください。
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