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第98回:企業版ふるさと納税

2020年3月19日

今回の税務トピックは、「企業版ふるさと納税」についてご紹介いたします。

企業版ふるさと納税とは、内閣府が認定した地方公共団体の地方創生事業に対し、企業が寄附を行った場合に法人税等から税額控除する仕組みです。令和2年度の税制改正より大幅な見直しが示され、企業が寄附しやすい仕組みが整備されました。また、税額控除の特別措置を5年間(令和6年度まで)延長することも決定しました。今回は企業版ふるさと納税の仕組みと、令和2年度の改正ポイントについてご紹介していきます。

 

1.寄附金額の全額が損金算入

企業版ふるさと納税の寄附金額の全額が企業の費用として損金算入となります。

寄附金額が100万円、実効税率が30%である場合、

寄附金額100万円は全額が企業の費用となり、実効税率の30%を乗じた30万円が国税+地方税の税額控除に当てられます。

 

2.寄附金額の約6割が税額控除

今回の改正より税額控除割合が従来の3割から6割に引き上げられました。

現行の損金算入による軽減効果(約3割)が上乗せされることで、最大で寄附金額の約9割が軽減できることになりました。そのため、企業負担は寄附金額の約1割となりました。寄附金額の約6割の税額控除の内訳は、約4割が法人住民税(+法人税)の税額控除に、約2割が法人事業税の税額控除に当てられます。

※法人住民税の税額控除額の上限は、法人住民税法人税割額の20%となります。

※法人事業税の税額控除額の上限は、法人事業税額の20%となります。

 

3.法人税の税額控除が適用となることもある

法人住民税の税額控除割合が4割に達しない場合、その残高を法人税から税額控除をすることが可能となります。ただし、法人税の税額控除は寄附金額の1割が限度となります。

法人税において税額控除を受ける際には2つの要件を満たす必要があります。

  1. 青色申告書を提出している法人であること
  2. 法人税の確定申告書等に、(1)控除の対象となる特定寄附金の額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付があり、かつ(2)当該書類に記載された寄附金が特定寄附金に該当することを証する書類を保存していること

※法人税の税額控除額の上限は、法人税額の5%となります。

 

4.地方公共団体への寄附金額

地方公共団体への寄附金額については10万円以上となります。

 

5.地方公共団体の認定手続きの簡素化と寄附時期の制限の大幅な緩和

今回の改正より、地方公共団体側の仕組みにも変更がありました。

法人側の変更点ではないため詳細は省きますが、下記a及びbの変更により地方公共団体が法人からの寄附金を受け入れやすい仕組みになりました。

  1. 個別の事業ごとの設定から「包括的な認定」として、地域再生計画の記載事項を抜本的に簡素化すること
  2. 地域再生計画の認定後、「寄附(受入れ)の金額の目安」の範囲内であれば、事業費確定前の寄附の受領が可能にすること

 

以上、企業版ふるさと納税の仕組みと令和2年度の改正ポイントについてご紹介いたしました。今回の見直しは平成30年度の個人のふるさと納税の寄附額が約3,495億円なのに対し、企業版ふるさと納税の寄附額は約34億円と1%程度にとどまることから行われました。今回改正より税額控除割合の引き上げ等から、寄附件数や寄附額がどれほど伸びるか注目が集まっています。企業版ふるさと納税に興味がございましたら、ぜひ地方公共団体へ寄附申出を行ってみてください。

 

企業版ふるさと納税について、ご相談・質問などございましたら、ぜひチェスナットまでお問い合わせください。

 

 

参考書籍・URL

「週刊税務通信」

「内閣府 企業版ふるさと納税の拡充・延長」

「国税庁 寄附金を支出したとき」