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第97回:混雑回避対策

2020年2月25日

今回の労務トピックは、東京オリンピック・パラリンピック期間に向けての交通機関の混雑対策についてお話しさせて頂きます。

 

人事労務の視点から、東京オリンピック・パラリンピック期間の混雑回避の対策として下記の3つがあげられます。

  1. 在宅勤務制度の導入
  2. 通常と異なる通勤経路を認める
  3. 始業時刻・就業時刻の変更

 

1.在宅勤務制度の導入

労働条件通知書の就業場所の欄に「本社、支店その他会社が指定する場所」等と記載し、従業員と締結している場合、一時的に交通機関の混雑、遅延を避けるためという理由で、会社が従業員に自宅での勤務を命じることができると解されています。

但し、在宅勤務の運用は、(1)労働時間管理と(2)セキュリティ面に注意が必要です。

(1)労働時間管理:在宅でも、通常の労働時間制が適用されます。つまり、在宅で業務に従事している時間を把握し、仮に残業が発生したら割増賃金を払う必要があります。また、労働時間を把握できない場合は、変形労働時間制、フレックスタイム制、事業外みなし労働時間制を適用することも考えられますが、法定の要件を満たす必要があります。

(2)セキュリティ面:平常時に在宅勤務を実施していない場合には、自社内で管理している情報が外部に出ることを想定しておく必要があります。端末を限定したり(会社貸与端末)、用途の限定(業務目的)等のルールを決め、運用できるよう事前の準備をする必要があります。

 

2.通常と異なる通勤経路を認める

オリンピック、パラリンピック期間は交通機関の混雑や乱れが想定されますので、混雑を回避するため、従業員が希望すれば会社は通勤経路の変更を正当なものとして拒否できないと考えられます。

通常とは異なる通勤を実施する場合に問題となるのが、費用負担です。一般的には、「最も経済的かつ合理的な公共交通機関を利用するものと使用者が認めた経路において、非課税限度額の範囲内で実費支給する」と規定されています。

決められた範囲を超えて従業員が自己の判断で通勤経路を変えた場合には、従業員が増額分の費用負担をすることになるため、予め労使でこの期間に利用する通勤経路を決めておくとよいでしょう。

 

3.始業時刻・終業時刻の変更

混雑を避けるために、オリンピック、パラリンピックの期間中だけ就業時間を変更するという方法も考えられます。

就業規則に、「始業時刻・終業時刻の繰り上げ又は繰り下げ」の規定が設けられていた場合、一日の所定労働時間を変えず、始業・終業時刻を繰り上げ、繰り下げることが可能となります。

ただ、就業時間の変更は、従業員の生活に大きな影響を及ぼすため(例えば、お子さんの登園、登校時間との関係で、準備、送迎をする等)、従業員の意見も聞いて、繰り上げ、繰り下げのパターンをいくつか策定し選択できるようにしたり、

時間幅を小さくしたり、就業時間の変更を行うことが決定したら、できるだけ早めに通知することが望まれます。

 

いかがでしたでしょうか。

私個人としては、在宅勤務に注目しています。オリンピック期間中だけではなく、育児・介護と仕事の両立支援にもつながり、効率よく働く生産性UPにもつながると考えます。

また、国、自治体も在宅勤務を推進すべく様々な支援を計画しており、これを機に在宅勤務を検討する事業所も多くなるように感じています。

 

混雑対策について疑問がある方や、アドバイスが欲しい方は、ぜひチェスナットまでお問い合わせ下さい。