2018年4月19日
さて、今月の税務トピックは消費税の簡易課税制度についてご紹介いたします。
簡易課税制度とは、消費税の納付額計算の特例制度です。
そもそも消費税の納付額計算には、下記の2つの方法があります。
【原則課税】
売上に係る消費税額(預り消費税)から仕入(費用)に係る消費税額(支払消費税)を控除して納付額を計算する方法。一般的な方法であり、申告書にも「一般」と書かれています。
【簡易課税】
仕入に係る消費税額は一切使わず、売上に係る消費税額のみで納付額を計算します。
まず最初に、「原則課税」の単純な例を挙げますと・・・
税率8%として、税込1,080円で仕入れた物を、税込2,160円で売ったとします。
160円は預かった消費税であり、80円は支払った消費税ですので、160-80=80円を税務署に納めるという事になります。
一方「簡易課税」は売上に係る消費税額のみを使うので簡易的な方法になりますが、その特徴としては売上取引を業種ごとに分類し、その業種によって決められた【みなし仕入率】を用いて計算した金額を、売上に係る消費税額から控除する、という事が挙げられます。
(計算式)売上に係る消費税-売上に係る消費税×みなし仕入率=納付額
【業種ごとのみなし仕入率】
- 第一種事業(卸売業)・・・90%
→他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業。 - 第二種事業(小売業)・・・80%
→他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第一種事業以外のもの。
(消費者向けの販売) - 第三種事業(製造業等)・・・70%
→農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業をいい、第一種事業、第二種事業に該当するもの及び加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます。 - 第四種事業(飲食業等)・・・60%
→第五種以外のサービス業(主に飲食業)や、事業用固定資産の売却など - 第五種事業(サービス業)・・・50%
→運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第一種事業から第三種事業までの事業に該当する事業を除きます。 - 第六種事業(不動産業)・・・40%
→不動産業に係る賃貸収入、仲介手数料収入など
上記を踏まえ、先ほどの原則課税の計算例で挙げたものを簡易課税(業種は雑貨屋さん)で計算してみます。
160円-160円×80%(第二種事業)=32円を税務署に納める事になります。
簡易課税は、この業種分類が肝になるわけですが、実はとても細かい分類規定があります。
(例)
- 製造業等に該当することとなる事業のうち、他の者の原料若しくは材料又は製品等に加工等を施して、その加工等の対価を受領する役務の提供を行う事業は第四種事業に該当する
(基通13-2-7)
→製造業は第三種事業ですが、他の者から材料の支給を受け、それを加工する製造業は第四種事業になります。 - 食堂等が自己の製造した飲食物を持ち帰り用として販売する事業は、製造小売業として第三種事業に該当する。
(基通13-2-8の2(注))
→食堂は飲食店業として第四種に該当しますが、持ち帰り用として販売した場合は、第三種事業に該当します。 - 食堂等が行う飲食物(店舗において顧客に提供するものと同種の調理済みのものに限る。)の出前は食堂等としての事業であり、第四種事業に該当する。
(基通13-2-8の2(注))
→持ち帰りは第三種に該当しますが、食堂が行う出前は飲食店事業ということで第四種に該当します。
このように、取引内容によっては判定がとても難しく思える簡易課税制度ですが、売上内容がそれほど多岐に渡らない事業者さんにとっては、決まった業種だけで計算をしていくので、その簡易さはやはり魅力的です。
ただ、注意して頂きたい点があります。
【簡易課税は絶対に還付は受けられない】
原則課税は、売上から仕入れに係る消費税額を控除しますので、例えば、高額な機械を購入した事で売上より仕入が多かった場合には還付が発生します。
ところが、簡易課税はみなし仕入率が最大で90%ですので、売上に係る消費税額を上回る事がなく、絶対に還付は受けられません。
したがって、もし簡易課税制度を選択されている方が、高額なものを購入される予定がある場合には、前事業年度において検討が必要です。
簡易課税制度は、とても奥が深く、上手に使えば大きな節税効果をもたらすので、もしご興味があればぜひチェスナット税理士法人までお気軽にお問い合わせ下さい!