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第250回:イノベーションボックス税制について

2025年2月18日

皆さま、こんにちは。
近年、企業の競争力は「知的財産(IP)」によって大きく左右されるようになりました。そんな中、特許権を活用する企業にとって朗報となるのが、「イノベーションボックス税制」です。この制度を上手に活用すれば、特許やライセンス収益にかかる税負担を軽減し、さらなる研究開発に投資することができます。
今月の税務会計トピックは、この企業の知財活用を促す新制度であるイノベーションボックス税制についてご紹介します。

 

イノベーションボックス税制とは?

この税制は、特定の特許権の譲渡やライセンス供与(以下、特許権譲渡等取引)による所得の30%を損金算入(所得控除)できる制度です。2025年4月1日から2034年3月31日までの間に開始する事業年度が対象となります。企業が開発した特許やAI関連技術を活かしながら、税負担を軽くできる点が大きなメリットとなります。

 

どんな企業が対象?

本制度の適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
・青色申告を行っている法人
・特許権譲渡等取引を行うこと
・確定申告時に必要書類を提出すること
これらの条件をクリアすれば、税制のメリットを最大限活かすことができます。

 

対象となる取引とは?

この制度で控除の対象となる特許権譲渡等取引とは、以下の2つの取引です。

・特定特許権等の譲渡:居住者または内国法人に対する特定特許権の譲渡(ただし、関連会社を除く)
・特定特許権等の貸付け(ライセンス供与):他の企業に対する特定特許権の貸付(関連会社を除く)

この仕組みをうまく活用することで、知財ビジネスを強化しつつ税負担を軽減できます。

※特定特許権等とは、次のうち我が国の国際競争力の強化に資するものとされる一定のもの(適格特許権等)であって、適用対象法人が令和6年4月1日以後に取得又は製作をしたものをいいます(措法59の3②二)。
①特許権
②人工知能関連技術を活用したプログラムの著作物

 

どれくらい税負担が減るの?

損金算入額(所得控除額)は、以下の計算方法で求められます。
損金算入額 = (特許権譲渡等取引による所得×自己創出比率)× 30%
※詳しい計算方法は本文下部の参考URLをご参照ください。

 

活用のポイントと注意点

この制度は、日本企業の技術開発を支援し、国内のイノベーションを促進する目的で導入されました。うまく活用すれば、特許収益を増やしながら税負担を軽減できます。
またこの税制を適用するための公的機関による事前承認手続き等もございませんので、利用のハードルはそれほど高くありません。ただし特許権譲渡等取引による所得を算出する上での各種金額の把握や、新しい制度であるため税制に対する理解を深める等しっかりとした準備が必要になります。
また新しく始まる税制ということもあり、実務上の細やかな部分で不明点がたくさんあるかと思います。近日中に当税制のガイドラインについて発表が予定されておりますので制度の適用を考えている方は公表後そちらもご確認いただければと思います。
ご不明な点等ありましたら、お気軽にチェスナットまでお問合せ下さい。

 

参考:国税庁 令和6年度法人税関係法令の改正の概要