2025年1月17日
皆さま、こんにちは!
令和6年11月1日から「フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法)」が施行されているのはご存知でしょうか。
この法律はフリーランスの方々が安⼼して働ける環境を整備するために制定されたもので、フリーランスと取引を行うすべての事業者・業務委託者を対象としています。
今回の税務会計トピックでは経理業務に影響がある部分に焦点をあてて、フリーランス新法についてご説明します。
●フリーランス新法の適用対象業務
今回フリーランス新法の適用対象となる業務は
「発注事業者からフリーランスへの「業務委託」(事業者間取引)」です。
発注事業者とはフリーランスに業務委託をしており、従業員を抱えている企業等のことで、フリーランスとは企業(発注事業者)の相手方にあたる事業者、いわゆる個人事業主や1人社長(本人の他に従業員がいない)のことを指します。
あくまでも事業者間(B to B)における業務委託が対象となり、一般消費者等、不特定多数との取引はフリーランス新法の適用対象外です。
なお、似たような法律で「下請法」もございますが、「下請法」との違いは下記のとおりです。
下請法:資本金1,000万円超の法人からの業務委託を対象、不適切な取引行為を規制
フリーランス新法:資本金の制限はなく、フリーランスと取引を行う全ての事業者、業務委託者を対象、取引先の適性化に加え、フリーランスの就業環境まで規定
(中小企業庁リーフレットより引用)
つまり、自社の業務委託先に、システムエンジニア、ライターやデザイナー等、フリーランスに該当する取引先がいる場合には、フリーランス新法に対応できているか確認が必要になります。
●フリーランス新法の内容
フリーランスの⽅と企業などの発注事業者の間の取引の適正化 とフリーランスの⽅の就業環境の整備 のため発注事業者(企業)側における義務項目が7つ明記されました。
① 書面等による取引条件の明示
書面もしくは電磁的方法(メール等)にて下記内容をフリーランスへ明示する必要があります。
・報酬の額
・フリーランスへの報酬支払期日
・発注事業者(企業)および フリーランスの名称 (※)
・業務委託(企業→フリーランスへ依頼)をした⽇
・役務提供を受ける日、場所(フリーランスが実際に稼働する日時、及び稼働場所)
・(物品を作成依頼し、検査を行う場合)検査完了日
・(現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払い方法に関する必要事項
※フリーランス同士で業務委託する場合でも①の取引条件の明示は必須となります。
(例:ライターが写真撮影をフリーランスであるカメラマンに業務依頼した場合等)
② 報酬⽀払期⽇の設定・期⽇内の⽀払
60⽇以内のできる限り早い⽇に報酬⽀払⽇を設定し、期⽇内に報酬を⽀払うこと
資金繰りや経理処理の関係上、末締めの翌月払いや翌々月払い(30日、60日サイクル)にて取引先へ支払を行っている企業が多いと思います。
例えば、末締めの翌々月払いを採用している企業にて、フリーランスであるライターへの支払が発生した場合、下記の通りフリーランス新法に抵触する可能性があります。
1月10日の納品完了日(役務提供完了日)から3月31日の振込日まで81日と
60日以上経過しての支払のため、フリーランス新法に抵触することとなります・・・
ここが特に経理業務に大きく影響する内容です。フリーランス(個人事業主)の取引先が多い、頻繁に支払が発生する企業は、支払サイクルがフリーランス新法に対応しているか見直しましょう。
③ 7つの禁⽌⾏為
フリーランスに対し、1か⽉以上の業務委託をした場合、
受領拒否 /報酬の減額 /返品 /買いたたき /購⼊・利⽤強制
不当な経済上の利益の提供要請 /不当な給付内容の変更・やり直し 行為は禁止されています。
※業務委託開始後に報酬の減額交渉をはじめ、減額行為自体禁止されたため、業務委託時に報酬をすり合わせしておく必要があります。
④ フリーランス募集情報の的確表⽰ (虚偽の内容や誤解を与える表示の禁止等)
⑤ 育児介護等と業務の両⽴に対する配慮
⑥ ハラスメント対策に係る体制整備
⑦ 中途解除等の事前予告・理由開⽰
※⑤〜⑦については主にフリーランスの方々の就業環境整備を目的とした内容のため詳細な内容や対象範囲については下記URLのリーフレットをご参照ください。
・中小企業庁
・公正取引委員会
●フリーランス新法の罰則は・・・?
フリーランス新法に違反する事実がある場合、フリーランス側から本法律の所轄省庁(公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省)に対しその旨を申出、申出の内容に応じ、所轄省庁において必要な調査が行われます。調査後、申出内容が事実と認められた場合には、助言、指導、勧告、命令、企業名公表等の行政指導が入り、さらに命令違反や検査拒否などがあった場合、50万円以下の罰金に処されるおそれがあります。
●最後に
フリーランス新法施行により、取引条件の明示等、企業側にて対応するべきことが細かく明確に設定されました。支払期日も取引条件の明示の際に記載を求められていますので、フリーランスへの支払が頻繁にある企業におきましては、業務委託決定から支払までの流れ、支払期日等、自社担当者内にてフリーランス新法に対応しているか、確認することをおすすめいたします。
今回は経理業務に影響のある部分に焦点をあてて説明してまいりましたが、その他詳細も含め、公正取引委員会にて概要説明動画も公開されておりますので、そちらもチェックいただければと思います。
(公正取引委員会URL)