2021年7月23日
皆さま、こんにちは。
今回の税務トピックは、「電子帳簿保存法の改正」についてご紹介します。
経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、記帳水準の向上等に資するため、令和3年度の税制改正において、帳簿書類を電子的に保存する際の手続等について、抜本的な見直しがされました。この見直しにより電子帳簿保存が利用しやすくなった一方で、電子データで授受した請求書等の紙保存が、所得税や法人税において認めてもらえなくなりますので注意が必要です。
初めに、電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は、大きく以下の3種類に区分されています。
1.電子帳簿等保存 (電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存)
2.スキャナ保存 (紙で受領・作成した書類を画像データで保存)
3.電子取引 (電子的に授受した取引情報をデータで保存)
これら3種類の電子保存の要件は、令和4年1月1日施行日以降、次の通り改正となります。
1.電子帳簿等保存
(1)これまで必要であった、税務署長の事前承認制度が廃止されました。
(2)複式簿記による記録であれば、最低限の要件(システム関係書類等の備え付け、電磁的記録のダウンロードが可能等)を満たす電子帳簿についても、電磁的記録による保存等が可能となりました。
(3)一定の届出書を提出し、かつ、従来とほぼ同様の保存要件を満たしている優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置が整備されました。
2.スキャナ保存
(1)これまで必要であった、税務署長の事前承認制度が廃止されました。
(2)タイムスタンプ要件、検索要件等について、次のとおり要件が緩和されました。
・タイムスタンプの付与期間が最長約2ヵ月以内になりました。
・受領者等の自署が不要になりました。
・検索要件が緩和されました。
・一定のクラウド等を利用することでタイムスタンプが不要になりました。
(3)適正事務処理要件が廃止され、スキャン後に原本の廃棄が可能となりました。
(4)スキャナ保存された電磁的記録に関連した不正があった場合の重加算税の加重措置が整備されました。
3.電子取引
(1)タイムスタンプ要件及び検索要件について次のとおり要件が緩和されました。
・タイムスタンプの付与期間が最長約2ヵ月以内になりました。
・検索要件が緩和されました。
(2)所得税や法人税において電子取引の取引情報を紙に印刷して保存する代替制度が廃止されました。
(3)電子保存に関して不正があった場合の重加算税の加重措置が整備されました。
今回の改正で、事務業務に最も影響が大きいと考えられるのは、「3.電子取引の(2)書面印刷による代替保存の廃止」です。たとえば、電子メールで請求書データを受け取り、それを紙に印刷して保存されている事業者にあっては、令和4年1月から所得税及び法人税において認められなくなります。
そのため、紙での保存要件を満たすには、紙の請求書を郵送での受け取り保存する必要があり、電子での保存要件を満たすには、電子メール等で請求書データを受け取り電子帳簿保存法に基づいて保存することになります。いずれにしても令和4年1月以降の書類等の保存方法や電子保存用のシステムの導入などについて、年内に電子保存を取り入れるかなどを含めて検討されることになりそうです。
以上、電子帳簿保存法の改正についてご紹介しました。今回のトピックの内容について、ご相談・ご質問などがございましたら、是非チェスナットにご連絡ください。
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