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第94回:令和2年度税制改正大綱

2019年12月19日

今回の税務トピックは、2019年12月12日に与党が発表した『令和2年度税制改正大綱』の中身について、特に中小企業経営者や一般の方などに関係するような内容について簡単にご説明させていただきます。

 

まずは個人所得税についてです。

 

こちらでは主なものとして、

 

  • 少額投資非課税制度(NISA)
  • 確定拠出年金の改正
  • 未婚のひとり親に対する優遇措置

 

があります。

 

NISAは、これまで2013年の制度開始以降、何度か改正が行われてきましたが、今回の改正によって、中長期的な運用に適した低リスク商品へ優先して投資させることで、将来の資産形成を促すことを目的としております。

確定拠出年金についても、企業型、個人型ともに拠出可能年齢の引き上げが行われ、また、企業型と個人型の併用もしやすくなりました。

この二つの制度は、将来が不安視されている公的年金を補完するように、老後資金を自分自身で運用することを促しているような改正内容になります。

 

次に、未婚のひとり親に対する優遇措置(所得控除)についてですが、これまでは寡婦(夫)控除という、夫(妻)と離別ないしは死別した子供のいる方に対する優遇措置があったのですが、未婚のシングルマザーについては適用されなかったことから、新たに寡婦控除と同等の制度が盛り込まれました。

 

次に法人税についてです。

 

企業によるベンチャー投資の税負担を軽減するオープンイノベーション税制と次世代通信規格5Gの整備支援の優遇措置が目玉となっております。

これらは大企業や大手通信会社向けの制度ではありますが、オープンイノベーション税制については、大企業がベンチャー企業への直接投資を促す制度ですので、今後は革新的な技術やノウハウがあれば、銀行以外から資金を調達するチャンスが増えるかもしれません。

 

また、資本金100億円超の大企業の飲食費(交際費)の損金算入ができなくなります。中小法人の800万円の損金算入枠については維持されることになりますが、交際費を巡ってはこれまで頻繁に改正がされてきておりますので、今後も注目が必要になるかと思います。

 

最後に消費税についてです。

 

制度的に大きな変更点はありませんが、申告期限の延長という皆様にも大きく影響する内容が盛り込まれております。

これまで法人税等については、申告期限を期末後2ヶ月から更に1ヶ月の延長することが認められておりましたが、消費税については延長制度がなかったため、法人税等の申告期限延長の適用を受けたとしても、消費税の申告に向け、2ヶ月で決算をまとめなければいけないことには変わりはありませんでした。それが今回、この延長が認められたことで法人税と足並みを揃えて決算作業に取り組むことができるようになり、決算作業における事務負担の軽減が見込まれます。残念なのが、この延長制度を開始するのが令和3年(2021年)3月期決算以降ということですので、今年の消費税率の改定に伴い負担が大きいであろう直近の決算については、引き続き延長なしでの対応が必要です。

 

事務負担の軽減という面で見ますと、クレジットカードの明細データやキャッシュレス決済のデータをそのまま領収書として扱えるような、電子帳簿保存法の見直しも盛り込まれております。これは昨今のキャッシュレス決済とクラウド型の経費精算システムの普及を反映したもので、領収書ベースで行っていた経理業務の効率化を進めるものです。

 

このように税制は変わりゆく時代に対応するため、毎年改正が続けられていくもので、その年の税制大綱を見ると、今の時代の様子や問題点というのが見えてくるかと思いますので、直接今の仕事や生活に関係しない分野の内容について目を通しても面白いのではないかと思います。

 

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