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第90回:消費税経過措置

2019年8月21日

今回の税務トピックは、消費税率引上げに関する「経過措置」についてご紹介いたします。

【経過措置とは】

そもそも消費税とは、原則は物の引渡しや役務の提供があった時にかけられる税金です。しかし、一部の商品・サービスについては、商品やサービスを受ける時点とお金を払う時点にズレが生じる場合があります。このズレは、消費税率が変わった時の税処理上の不都合を招く恐れがあり、そのズレをスムーズに処理するための法的措置が「経過措置」なのです。

例えば、遊園地の入場券を9月30日に前売りで購入し10月1日に入園したケースでは、購入した時に適用されている税率は8%で、実際に入園した時は10%というような事態が起こります。

このようなケースでは、お金を払った時点の税率か、実際にサービスを受けた時点の税率かで2%の差が発生し、消費者・事業者双方にとって不都合が出てしまいます。

そこで、「一定の取引」においては税法上の「経過措置」が設けられているということです。

「経過措置」が適用されますと、10月1日以降であっても旧税率8%のままで扱われることになりますが、全ての取引において経過措置が適用されるわけではなく、国税庁は「一定の取引」を次のように定めています。

 

【経過措置が適用される一定の取引】

1.旅客運賃、映画・演劇・競馬場・競輪場・美術館・遊園地等への入場料金等

令和元年10月1日以後に行うもののうち、平成26年4月1日から令和元年10月1日の前日までの間に領収しているもの

 

2.電気・ガス・水道・電話・灯油に係る料金等

継続供給契約に基づき、令和元年10月1日前から継続して供給しているものに係る料金等で、令和元年10月1日から令和元年10月31日までの間に料金の支払を受ける権利が確定するもの

 

3.工事や製造、ソフトウェア等の請負契約

平成25年10月1日から平成31年4月1日の前日までの間に締結した工事(製造を含みます。)に係る請負契約に基づき、令和元年10月1日以後に課税資産の譲渡等を行う場合における、当該課税資産の譲渡等

 

4.資産の貸付け

平成25年10月1日から平成31年4月1日の前日までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき、令和元年10月1日前から同日以後引き続き貸付けを行っている場合(一定の要件に該当するものに限ります。)における、令和元年10月1日以後に行う当該資産の貸付け

 

5.冠婚葬祭のための施設やサービスの提供(指定役務の提供)

平成25年10月1日から平成31年4月1日の前日までの間に締結した役務の提供に係る契約で当該契約の性質上役務の提供の時期をあらかじめ定めることができないもので、当該役務の提供に先立って対価の全部又は一部が分割で支払われる契約に基づき、令和元年10月1日以後に当該役務の提供を行う場合において、当該役務の内容が一定の要件に該当する役務の提供

 

6.予約販売に係る書籍等

平成31年4月1日前に締結した不特定多数の者に対する定期継続供給契約に基づき譲渡する書籍その他の物品に係る対価を令和元年10月1日前に領収している場合で、その譲渡が令和元年10月1日以後に行われるもの

 

7.特定の新聞購読

不特定多数の者に週、月その他の一定の期間を周期として定期的に発行される新聞で、発行者が指定する発売日が令和元年10月1日前であるもののうち、その譲渡が令和元年10月1日以後に行われるもの

 

8.通信販売による取引

通信販売の方法により商品を販売する事業者が、平成31年4月1日前にその販売価格等の条件を提示し、又は提示する準備を完了した場合において、令和元年10月1日前に申込みを受け、提示した条件に従って令和元年10月1日以後に行われる商品の販売

 

9.有料老人ホームに関する介護サービスの提供

平成25年10月1日から平成31年4月1日の前日までの間に締結した有料老人ホームに係る終身入居契約(入居期間中の介護料金が入居一時金として支払われるなど一定の要件を満たすものに限ります。)に基づき、令和元年10月1日前から同日以後引き続き介護に係る役務の提供を行っている場合における、令和元年10月1日以後に行われる当該入居一時金に対応する役務の提供

 

10.家電リサイクルの再商品化に関する取引

家電リサイクル法に規定する製造業者等が、同法に規定する特定家庭用機器廃棄物の再商品化等に係る対価を令和元年10月1日前に領収している場合で、当該対価の領収に係る再商品化等が令和元年10月1日以後に行われるもの

 

11.リース譲渡にかかる資産の譲渡等の時期の特例(消費税法第16条第1項)を受ける場合

平成26年4月1日から令和元年10月1日の前日までの間に行ったリース譲渡について消費税法第16条第1項の適用を受けた場合において、令和元年10月1日以後にその支払期日が到来するものがあるときは、当該賦払金に係る部分の課税資産の譲渡等

 

上記内容だけでは分かりづらい部分が多いため、国税庁では多数のQ&Aを掲示しています。

その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

 

【旅客運賃 令和元年10月1日以後のプラン変更による追加料金に係る適用税率】

Q、令和元年10月1日以後の航空料金につき、令和元年9月30日までの間に領収している場合、経過措置が適用され8%になりますが、令和元年10月1日以後にアップグレードの申出があり、追加で料金を請求している場合にはどうなりますか。

 

A、アップグレードによる追加料金は令和元年10月1日までに領収しているものではないので、経過措置の適用はありません。

また、そのアップグレードが新たな契約の締結となる場合には、令和元年10月1日までに領収している金額も含めた全額に対して経過措置が適用されず新税率(10%)が適用されることになります。

・・・もし金額が変更になりそうであれば、9月30日までに確定させた方が良いですね。

 

【資産の貸付けに関する経過措置の概要】

Q、一定の要件とはどういったものですか。

 

A、次の「i及びii」又は「i及びiii」に掲げる要件に該当するときは令和元年10月1日以後に行う資産の貸付けについては旧税率(8%)が適用されます。

i.当該契約に係る資産の貸付期間及びその期間中の対価の額が定められていること。

ii.事業者が事情の変更その他の理由により当該対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと。

iii.契約期間中に当事者の一方又は双方がいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがないこと等。

・・・端的に言えば、最初に契約した内容をすぐには変更できないようになっていることです。

 

経過措置に関しては要件が限定列挙されているとはいえ適用されるケースが意外と多いので、上記の要件に当てはまりそうであればすぐに確認をすることをお薦めします。

国税庁の該当ページのURLを載せますので、ご参考にご覧ください。

 

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経過措置の取扱いQ&A

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