2018年9月19日
今回の税務トピックは、いよいよH31年10月に迫った消費税率引き上げと同時に実施される軽減税率制度について、その概要と軽減税率対象物品の範囲についてご紹介させていただきます。
そもそも軽減税率とは、特定の物品の課税率を他の物品に比べて低く設定することを言います。
多くの欧米諸国で導入されており、例えばイギリスでは、お菓子類は嗜好品として標準税率を適用しているのですが、ビスケット・ケーキに限っては食糧品として消費税自体が発生しない等、その国々によって様々な物品が軽減税率の対象物品となっています。
日本では消費税率を10%に引き上げる際、一定の物品が軽減税率の対象物品となり、税率は8%のまま据え置かれることになっています。一定の物品とは、以下の2つを言います。
- 飲食料品の譲渡(酒類及び外食を除く)
- 定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡
また、対象物品の売上・仕入れがある事業者は、これまでの記載事項に加えて税率ごとの区分を追加した請求書等の発行や記帳等の経理を行う必要が出てまいりますので注意が必要です。
ここでは軽減税率対象物品の範囲をそれぞれ見ていきたいと思います。
イ.飲食料品の譲渡(酒類及び外食を除く)
国税庁HPによると、飲食料品とは、「食品表示法に規定する食品(酒類を除く。)をいい、一定の一体資産を含みます。
なお、外食やケータリング等は軽減税率の対象には含まれません。」とされており、人の飲用又は食用以外の用途に供するもの(食品表示法の「食品」以外のもの)として取引される場合には、たとえ飲食が可能なものであっても「飲食料品の譲渡」には該当せず、軽減税率の対象とならないようです。
この場合の判定は売り手側が売る際に何の用途で売ったかで判定するとの事で、例えばミネラルウォーターは対象となりますが水道水は対象外、といった具合です。この他にも、炭酸飲料であるオロナミンCは対象となりますが指定医薬部外品であるリポビタンDは対象外となる等、購入される際に注意が必要なものが多くあります。
また、「外食やケータリング等」とは、国税庁Q&Aによると、「テーブル・椅子・カウンターなどの飲食設備がある場所で、飲食料品を飲食させる役務の提供をいう。」と定義されています。
つまり飲食に用いる事が出来る設備を持っていて、そこで食べられるなら外食という事になります。
外食に該当するもの(標準税率10%適用)と外食に該当しないもの(軽減税率8%適用)は以下の通りです。
【外食に該当するもの(標準税率10%適用)】
- ファストフード店での飲食
- コンビニエンスストア内のイートインスペースで飲食する為の販売
- 飲食店内での飲食(セルフサービス形式・立食形式・フードコートでの飲食を含む)、
飲食店内で飲食させるものとして提供するペットボトル飲料、缶飲料 - 飲食店での料理の残りの折り詰め
- 屋台での飲食料品の販売(おでん屋やラーメン屋等でテーブル・椅子・カウンター等の飲食設備があるもの)
- 食堂車での飲食
- ホテルのルームサービス
- 出張料理、ケータリング(相手方が指定した場所で加熱・給仕等のサービスを行うもの)
- 社員食堂、学生食堂における食事の提供
【外食に該当しないもの(軽減税率8%適用)】
- ファストフード店のテイクアウト
- コンビニエンスストア内における飲食料品の販売
- 飲食店のレジ前にある菓子等の販売
- 寿司屋のお土産
- 屋台や移動販売車での飲食料品の販売(テーブル・椅子等の飲食設備がない)
- 列車内の売店やワゴン販売
- ホテル客室の冷蔵庫内の飲料
- 出前、宅配
- 有料老人ホーム(1食あたり、及び、1日あたりの上限金額あり)、小中学校等での給食
以上のように、個別事例に当てはめると次々と疑問や気になる点が出てくると思います。
国税庁Q&Aには更に細かい個別事例が記載されておりますので、気になる方はご確認下さい。
(国税庁Q&A):
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/02.htm
次に、「一体資産」とは、「食品と食費以外の資産が一体として販売されるもの(あらかじめ一の資産を形成し、又は構成しているもの)で、当該一の資産に係る価格のみが提示されているもの」と定義されており、代表例としておもちゃ付きお菓子が該当します。
この一体資産の譲渡については、原則としては軽減税率の対象とはなりませんが、次の要件を満たす場合は飲食料品として軽減税率が適用されます。
- 販売価格(税抜)が1万円以下
- 全体の価額に占める飲食料品の価額が2/3以上
従いまして、例えば小売店が別々に仕入れた商品を独自にセット販売する事としたものについても、要件を満たせば一体資産として軽減税率の対象となりますので、販売方法を練り直しても良いかもしれません。
ロ.定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡
国税庁HPによると、「一般社会的事実(政治・経済・社会・文化等)を掲載する、週2回以上発行される新聞の定期購読契約に基づく譲渡」と定義されており、例えばスポーツ新聞や業界紙であっても、要件を満たせば軽減税率の対象となります。
但し、駅の売店やコンビニエンスストアでの販売は定期購読に基づくものではないので軽減税率の対象とはならず、また、電子版についても軽減税率の対象とはなりませんのでこれから定期購読をお考えの方はご注意下さい。
以上、今回の税務トピックは軽減税率について内容の一部分ではありますがご紹介させて頂きました。
まだこの制度自体が始まっていない事もあり、今回ご紹介させて頂いた内容は今後変更される可能性がある事をご了承ください。
その他ご不明な点等あればチェスナットへお問い合わせください!