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第148回:土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認

2021年9月15日

皆さま、こんにちは。
9月に入ってから感染者数は減少傾向にあるとはいえ、まだまだ新型コロナウイルスの脅威が収まる気配も見えず、先行きが不安という方も多いのではないでしょうか。
このような状況下で、事業主様の中には、資金繰りが厳しくなったために、資金調達として資産の譲渡(売却)を行うことがあると思います。9月上旬には、大企業が本社ビルを売却するというニュースもありました。今月の税務トピックでは、資産の一つである土地をたまたま単発で譲渡した場合の消費税の取扱いについてお話しします。

土地の譲渡は、不動産の売買を営む会社でない限り滅多に行われません。普段、不動産を事業として取り扱わない企業が土地を譲渡した際に気を付けなければいけないことが、消費税の課税売上割合の低下です。課税売上割合の低下によって、消費税の納税額が多くなる可能性があります。
しかし、土地の譲渡が単発のものであった場合に、適用承認申請書を提出することにより課税売上割合に準ずる割合の承認を受けられることをご存じでしょうか。この承認を受けることで、土地の譲渡があった課税期間の本来の課税売上割合を使用せずに、特例の課税売上割合により消費税を計算することができます。
 
 

(1)課税売上割合とは

課税売上割合は、課税期間中の売上高全体のうち、課税売上高が占めている割合のことです。土地の譲渡などの非課税売上高が発生すると、課税売上割合が低くなります。
課税売上割合が低下することにより、消費税額の計算方式と仕入税額控除の控除額に影響が出てきます。
 
 

(2)課税売上割合の低下によって起きること

課税売上割合の低下で起きることは2つあります。
1つ目は、消費税額の計算方式の変更です。「課税売上割合が95%未満」又は「その課税期間の課税売上高が5億円を超える」場合、消費税額の計算方式は「個別対応方式」又は「一括比例配分方式」の選択となります。
2つ目は、仕入税額控除の控除額の減少です。例題として、個別対応方式で消費税を計算している事業者が、土地の譲渡を行った場合と行わなかった場合の計算例を記載します。
※計算方法を簡略化しているため、実際の計算方法とは異なります。

【ケース1 土地の譲渡がなかった場合】

条件:売上高4,400円 仕入2,200円 交通費1,100円 (すべて税込)
1.課税売上割合
4,000円 / 4,000円 = 1
2.消費税
売上高(仮受消費税): 4,400×10/110=400円
仕入等(仮払消費税): 3,300×10/110=300円
3.消費税納付額
400円-300円=100円

【ケース2 土地の譲渡があった場合】

条件:ケース1の条件に加えて、土地の売却10,000円(非課税売上)を加える。
※交通費1,100円は課税売上高と非課税売上高に共通してかかるものとする。
1.課税売上割合
4,000円 / (4,000円+10,000円) =0.2857… (A)
2.消費税
売上高(仮受消費税): 4,400×10/110=400円
仕入等(仮払消費税):
a課税売上高にかかる仕入等   2,200円×10/110=200円
b課税売上高と非課税売上高に共通してかかる仕入等(交通費)
1,100円×(10/110)×(A)…≒28
3.消費税納付額
400円-(200円+28)円=178円

ケース1及び2の計算例の通り、課税売上割合が低下すると、他の金額は同じでも消費税を多く納付することになってしまいます。
ただし、課税売上割合の低下が、たまたま土地の譲渡があったことが原因である場合、「課税売上割合に準ずる割合の適用承認」を受けることにより、特例の課税売上割合により消費税を計算することができます。
 
 

(3)消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書

土地の譲渡が単発のものであり、当該土地の譲渡がなかったとした場合に、事業の実態に変動がないと認められる場合に限り、承認申請書を提出することで、次の割合のいずれか低い割合により課税売上割合に準ずる割合で計算することができます。

a当該土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合
b当該土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合

※「土地の譲渡がなかったとした場合に、事業の実態に変動がないと認められる場合」とは、事業者の営業の実態に変動がなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内である場合のことを言います。
 
 

(4)適用承認申請書の提出期限

令和3年4月に改正があり、令和3年4月1日以後に終了する課税期間から、課税売上割合に準ずる割合の適用を受けようとする場合の提出期限が緩和されました。
改正前は、『適用を受けようとする課税期間の末日までに税務署長の承認』を受ける必要がありました。そのため、課税期間の末日までに税務署長の承認を受けるには、少なくとも課税期間の末日よりも1ヶ月以上前に承認申請書を提出する必要がありました。
しかし改正後、令和3年4月1日以後に終了する課税期間からは、『適用を受けようとする課税期間の末日までに承認申請書を提出』し、同日の翌日から同日以後1月を経過する日までに税務署長の承認を受けると改正されました。要するに、改正前は税務署長の承認をもらう期限であった課税期間の末日が、改正後は申請書の提出期限になりました。
例えば、3月決算法人の場合、3月31日までに承認申請書を提出し、その翌日から1月以内に承認をもらうことにより適用されます。

土地の譲渡が単発のものであった場合、提出期限までに申請書を提出することで『消費税課税売上割合に準ずる割合』を適用できる可能性があります。もし、土地の売却を予定している事業主様がいらっしゃいましたら、今回お伝えした『消費税課税売上割合に準ずる割合』の適用が受けられるのかなど、是非チェスナットにご相談ください。
以上、「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準じる割合の承認」についてご紹介しました。長文をお読みいただきありがとうございました。

参考URL
国税庁「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認」
国税庁「消費税法改正のお知らせ(令和3年4月)」

 

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